中国に来て気付くことの一つは子どもの数の多いことです。
産児制限が敷かれているとはいえ、基本的に中国人は子ども好きです。

また、子は宝という概念も強く、結婚すれば親から早く孫の顔が見たい、孫の世話をしたいという圧力もかけられるようです。

それでも、今の親の世代は幼い時に祖父母に預けられ、親は出稼ぎに行って旧正月などの休日の時だけ戻ってくるという仕方で育ったため、子育てそのものを知らない人も多いようです。

中には自分がそうだったように、子どもを親に預けて夫婦で出稼ぎに出る人も少なくありません。

ある日の午後、食堂で食事をした際にそこの奥さんとおしゃべりしていて子育ての話になりました。

彼女は自分が子どもの時に祖父母に預けられた経験から、自分は子どもと一緒にいてあげたい思って自分で育てているとのことでした。

彼女に子どもが言うことを聞かない場合どうするのか尋ねると、間髪入れずに
「打孩子dǎ háizi」(子どもを叩く)
という返事が返ってきました。

中国人は面子は重んじても、恥という感覚がないためか、道でもスーパーでもバスの中でも、言うことを聞かない子どもを怒鳴って叩いている親をよく見かけます。
手探り状態の子育てに親たちも四苦八苦しているという感じです。

日本では幼い時から、人に迷惑をかけてはいけないということを教えられて育ちます。

中国ではそういう感覚がないためなのか、子どもたちは天真爛漫で大変子どもらしく、自分の思ったことを何でも正直に話すのでいろいろ学べることもあります。

例えば、先ほどの食堂の奥さんと話をしていると、彼女の小学生の息子が店にやって来ました。

母親に促されて子どもが私たちに挨拶した後、親子のこんなやりとりがありました。

母親:「他们都是日本人,你请教他们学日语吧。tāmen dōu shì rìběnrén ,nǐ qǐngjiào tāmen xué rì yǔ ba 。」
(この人たち日本人なんだよ、あんた日本語教えてもらったら?)
子ども:「不过、日本人是坏人啊。búguò 、 rìběnrén shì huàirén a 。」
(でも、日本人って悪者だよ。)
母親:「那是电视节目里面的事吧。nà shì diànshì jiémù lǐmiàn de shì ba 。」
(それはテレビ番組の中のことでしょ。)

なるほど、中国のテレビ番組は戦争ドラマ特に抗日ドラマが多く、子どもたちは子どもの頃から日本人は坏人huàirén(悪者)ということを教え込まれるようです。

日本人に面と向かって日本人は坏人huàirén(悪者)だと言えるのも子どもならではでしょう。

それでも普段接する中国人の中にも、言葉には表さなくても同じように感じている人もいることを意識しておく必要も感じました。

子どもの正直さで思い起こさせられた別の例があります。
お昼に友人とケンタッキーで待ち合わせをして、友人が注文している間彼女の幼稚園生の子どもと話をしていました。

するとその子から、
「你的声音太小了,你大声一点说话。nǐ de shēngyīn tài xiǎo le , nǐ dà shēng yī diǎn shuōhuà 。」
(あんたの声小さすぎるよ、もっと大きな声で話そうよ。)
と指摘されてしまったのです。

それまでにも主人や友人から私の声が小さいので、もう少し大きな声で話すようにと指摘されることがあったのですが、なんと幼稚園生の子どもに言われてしまうとは、かなり意識して大きな声で話す必要があることを思い起こさせられたのでした。